この頃 我が家は日本一美味しい大根を食べている
Kさんがつくる大根だ
Kさんは定年退職してから畑が一番のお気に入りで生きがいだという
そのKさんがうちにせっせと大根を運んでくれる
最初 茄子をいただいた
すごくびっくりしたのを覚えている
だって
Kさんと話したこともなかったのだから
Kさんは私が妹のように思っているMちゃんの父上だ
Mちゃんは十数年前アメリカに嫁いだ
それから急速に よりMちゃんと私は仲良くなった
Kさんは不器用だ
Mちゃんの話から容易に察することができる
KさんとMちゃんの間には
父と娘にしかわからない こだわりと思いこみとわだかまりがある
そんなことを感じている私のもとに
ある朝 Kさんが来た
「Mをよろしく」
それだけ言って 茄子をおいていった
???Mちゃんの父上だよね・・・???
ちょっと理解できなくて
はじめてKさんがきたのに
私は「ありがとうございます」しか発せなくて
Kさんは飛ぶように自転車に乗って消えていった
それ以来
Kさんは大根をうちの玄関に置いてくれるようになった
相変わらず
年に二回我が家に立ち寄るMちゃんは
どんどんアメリカ人になっていく
アメリカの人で妻で母で
茄子と大根の話をすると
父上の良さも良く分かっているのに
父と娘のすれ違った感情がぬぐえずにいる
もったいない 本当にもったいない
大根をいただくたびにそう思いながら
大切に美味しくいただいている
この大根がKさんの想いの全てだと思う
Mちゃんへの そしてMちゃんからの
こだわりと思いこみがやるせなくて辛くて
でも 不器用なままでしか この生き方しかできなくて
この大根は私にも投げかけてくれた
Kさんの精一杯の想いが詰まっている
大丈夫だ この父娘はすごい愛でつながっている
玄関に置かれている大根を見つけるたびに
親子って 家族って
なんてすごいんだろう
なんて素敵なんだろう
すれ違っても不器用同士でも
そこに愛が存在することが周りにも分かってしまうなんて
大根から多くのことを教わった
日本一美味しい大根をほおばりながら
KさんとMちゃんの本人たちには見えない絆を感じ
私はいつも泣きたくなる
誤解しないでくださいね
これはとても優しい感情からあふれてくるものなんです